ウェブサイト「環」

平成17年7月29日 第152号
九州経済産業局広報・情報システム室


ウェブサイト「環」第152号の発行です。
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■九州経済産業局幹部雑感


 地域中核企業とは

地域経済部長 内藤 理(ないとう おさむ)

 入省4年目に中小企業庁技術課に異動し、中小企業について勉強していると、日本の各地に地域経済を支える豪族のような中小企業がいることに気がつきました。その後も、中小企業振興や地域振興に関わるポストを転々とした結果、10年ほど前から「地域中核企業の育成が重要だ!」と唱えるようになりました。

ここでいう地域中核企業とは、企業城下町を形成するような大企業の工場ではなく、自立した個々の地場企業です。そのイメージするところは、上場を果たしたベンチャー企業やナショナルブランドを有する企業やオンリーワン技術を有する企業や開発から営業までの機能を有するに至った進出企業など多様なものです。

昨年、九州経済産業局に異動して新設の地域経済部を任せられた際に、新しい部のミッションを出来るだけ簡潔に示そうということで、地域中核企業の育成を当部の中期目標に掲げることにしました。現在、産業クラスター計画や地域新生コンソーシアム研究開発事業や各種の中小企業施策の推進を通じて、地域中核企業を育成しているところです。
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 さて、こんな話を色々なところでしていると、九州大学の塩次喜代明教授から、自分も地域中核企業に関する論文を15年ほど前から出しているということを教えていただきました。さらに、インターネットで調べて見ると、秋田県、埼玉県、山口県、高知県、宮崎県、足利市及び鎌倉市等の施策の中に、地域中核企業の振興・育成という言葉が出てきます。その他の産業支援機関や金融機関においても、地域中核企業という言葉が使われています。それらの中身を見てみると、地域中核企業の定義は、かなり曖昧でバラツキもあることが分かります。

一方、私達は、地域中核企業にどんな効果を期待しているのでしょうか? ひとつは、地域における商取引の起点となって、小さなピラミッドを形成することです。単一の巨大ピラミッドの地域経済よりも多数の小ピラミッドに支えられた地域経済の方が経済環境の変化に対して柔軟に対応できると考えられます。次に、株式公開などで経営の透明性を高めて、質の高い雇用の場を提供し、東京の大学などに流出した優秀な地元出身者を引き戻す受け皿となることです。3つ目に、イノベーションの連鎖反応を引き起こし、地域経済の成長を牽引することです。また、後続企業がその経営モデルを学習することも期待しています。
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 このように、地域中核企業は、多くの人が関心を寄せ、地域経済の振興に大きな効果があると考えられるにも関わらず、未だ、十分な検討はされていません。そのため、今年度は、塩次先生の御指導の下に、地域中核企業の理論研究と実態調査を進める予定です。

最近の新規上場企業の業種構成を見ると、卸・小売、外食、情報・通信、サービスという広義のサービス業が圧倒的に多いことから、おそらく、地域中核企業の候補企業も広義のサービス業が大きなウェートを占めることになりそうです。そして、脆弱な地域中小企業と支配的な大企業という従来の概念では捉えられない新しい中小・中堅企業像を提示したいと考えています。