ウェブサイト「環」

平成18年7月 7日 第196号
九州経済産業局広報・情報システム室


ウェブサイト「環」第196号の発行です。
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■九州経済産業局幹部雑感

  進化するロボカップ

地域経済部長 内藤 理(ないとう おさむ)
 

 今回は、私がボランティアとして運営のお手伝いをしているロボカップの近況について、報告させていただきます。
今年のゴールデンウィークに北九州市でロボカップジャパンオープン2006を開催させていただいたので、記憶に残っている方も多いかと思います。お陰様で、175チームが参加して大盛況のうちに無事終了することができました。お世話になりました北九州市の各方面の方々に、この場をお借りして御礼申し上げます。
さらに、先月の14日〜20日には、世界35ヶ国から438チームが参加して、ドイツのブレーメン市で第10回世界大会が開催されました。日本からも49チームが参加し、ヒューマノイドリーグでチーム大阪がベストヒューマノイド賞(ルイ・ヴィトン・ヒューマノイドカップ)を獲得するなど、人間のW杯を上回る好成績を収めることができました。
そもそもロボカップは、1993年にソニーの北野宏明さんをはじめとした日本の人工知能研究者グループが提唱したもので、2050年までに自律型ヒューマノイドロボットのチームでW杯優勝の人間チームに勝利するという壮大な目標を掲げている競技会&学会です。とても実現できない夢物語と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、1903年のライト兄弟の初飛行から44年で音速を突破し、さらに22年でアポロ11号が月面着陸したことや、1946年に誕生した電算機が51年でチェスの世界チャンピオンに勝利したことから、ロボカップ関係者は、50年という時間があれば、決して不可能な挑戦ではないと考えています。また、その過程で生み出される技術は、直ちに、災害救助用のレスキューロボットや福祉ロボット等に転用でき、21世紀のリーディング産業として期待されている家庭用ロボットにもつながる波及効果の極めて大きなものと考えています。
ロボカップは、数あるロボットコンテストのひとつと見なされがちですが、実は、サッカーロボットやレスキューロボットの研究開発を進める国際プロジェクトです。そして、ロボカップの真髄は、その研究開発管理手法「遺伝的研究開発マネジメント」にあるというのが私の持論です。よろしければ、2002年1月の日本ロボット学会誌で発表した「ロボカップが提案する新たな研究開発管理手法」という拙論を参照していただければ幸いです。この遺伝的研究開発マネジメントにより、ロボカップは、その遠大な目標に迅速かつ効率的に到達できるものと考えています。
さて、2007年のアトランタ市での世界大会に向けての話題は、何と言っても、家庭用ロボットの開発を目指したRoboCup@Homeリーグが正式競技としてスタートすることです。(実は、ブレーメンでも17チームが参加して、エキジビションが行われました。)ルールの詳細は、これから詰めていくことになりますが、概ね、テレビとソファーのあるリビングルームと冷蔵庫のあるキッチンを舞台に、1〜2台のロボットが人間との共生を演じるというものになりそうです。これは、博多湾のアイランドシティで九州大学の長谷川先生を中心に進められているロボットタウンの実証研究プロジェクトと一致する方向です。(ロボット・タウンの方は、まるまる1軒のモデル住宅と周辺の街並みですので、より規模は大きいのですが・・・・。)このRoboCup@Homeリーグでは、九州の優れた技術ポテンシャルが発揮できるので、今後、九州のチームの活躍を大いに期待したいところです。
また、6月30日には、前田建設工業鰍フファンタジー営業部のホームページで、「民間ロボット救助隊を創ろう」プロジェクトが立ち上がり、多くのマスコミで取り上げられました。これは、ロボット技術を駆使して世界の大規模災害に立ち向かう国際救助隊を結成し、その基地を建設しようという仮想プロジェクトで、NPO法人ロボカップ日本委員会とNPO法人国際レスキューシステム研究機構が全面的に協力しています。レスキューロボットが災害現場に投入される例も増えてきているので、近い将来、本当に日本版サンダーバード「雷鳥一家」が誕生するかもしれません。日本らしい国際貢献の新しい姿として、御期待ください。